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マレーシアを拠点にASEANにCAE・数値シミュレーション事業を展開するサイバネットシステム社。 MTownでは同社でCOOを務める榊原 孝志氏にサイバネットの事業戦略から今後の展望・ビジョンについて話を伺った。
榊原 孝志 さん
Chief Operation Officer / Director
CYBERNET SYSTEMS MALAYSIA SDN.BHD.
京都大学大学院工学研究科卒。 数値解析シミュレーション分野の技術者として従事し、2018年のサイバネットシステムマレーシア立ち上げ時からマレーシアに移住。近年はマレーシアのみならず様々なASEAN諸国の技術を用いたソリューション提案、啓蒙を行っている。
マレーシアとの出会い、そして現在のお仕事に至るまでの経緯を簡単にご説明ください。
もともと日本のサイバネットで解析エンジニアとして働いていました。 2018年にマレーシア拠点の立ち上げに伴い、最初は技術担当としてマレーシアに赴任しました。マレーシアでの生活は、立ち上げ準備期間を含めて約7年になります。現在は COO(最高執行責任者)として経営全般を見ています。
御社の主力事業 「CAE」は具体的にどのような技術なのでしょうか?
CAE(Computer-Aided Engineering) は、製品の研究開発段階で、実際に試作品を作成する代わりに、コンピューター上で設計したモデルを使って解析や可視化を行う技術です。自動車や航空機、電気部品の設計など、さまざまな分野で活用されています。簡単に言えば「超優秀な計算機」と考えてもらえればわかりやすいかもしれません。CAEのシミュレーション技術は物理現象を表現できる高度な計算機能を持っています。例えば、力を加えた際の変形や周囲を流れる空気の動き、温度分布など、さまざまな条件下での挙動を仮想的に再現できます。 試作品を作成して物理的な実験をする代わりに、これらをコンピューター 上で行うことができるのです。
非常に高度な技術のようですが、使いこなすのは難しそうですね。
その通りです。エクセルやワードのように、自己学習でもある程度使いこなせるソフトウェアもありますが、数値シミュレーションは専門性が高く、基礎知識なしですぐ扱えるものではありません。上手く運用するためには、それぞれの分野のプロフェッショナルから学べる環境が必要になります。サイバネットはそのような環境づくりのお手伝いをしています。
サイバネットの事業内容や特徴を教えていただけますか?
サイバネットは、数値シミュレーションのプロフェッショナル集団です。従業員の約半数がエンジニアであり、構造解析や流体解析、磁場解析といった解析分野の専門家です。また、設計・生産現場向けには、CAD、I oTプラットフォーム、ARなど多様なソリューションも展開しています。お客様には解析ソフトウエアの提供、技術サポート、コンサルテーション、並びに解析代行等のサービスを提供しています。またグローバルネットワークを介して、さまざまな技術領域・産業分野に対応可能なことも強みです。
ビジネスターゲットはどのように設定されていますか?
日系企業、ローカル企業ともにター ゲットにしています。マレーシア支社立上げ時は日系企業にフォーカスしていました。日本本社であるサイバネットジャパンがすでに多くの日系企業と取引しており、その既存顧客のASEAN拠点に対してサービスを提供するのが最初のステップでした。現在は、ローカルの大学・技術団体・パートナーとの関係も強化できつつあるので、より一層ASEAN諸国のローカル企業へのアプローチも加速させていきます。
日本の企業がASEANに製造拠点を置く理由として、「人件費の安さ」が大きな要素だと思いますが、 CAEでもそのような側面があるのでしょうか?
はい。それも一つの要因ではあるかと思います。いわゆる”オフショア拠点"の考え方になりますが、日本でやっているCAE業務を海外の人件費が安い地域で展開しようとするケースです。一方別のパターンとしては、ASEAN諸国で求められている「そこそこのクオリティで安価な製品を作りたい」ニーズに対応するために、海外拠点で独立したCAE業務を行うケースもあります。現地では材料もスピーディーかつ安価に調達できるものを使い、現地仕様で最適化された製品を作るためにCAEが利用されているケースもあります。
マレーシアでの具体的な事業展開について教えてください。
マレーシアでは、石油化学、自動車、 電子部品、航空宇宙といった製造業のR&D部門や設計部門、さらに技術系大学に対して技術サービスを提供しています。最初は日系企業を中心に展開していましたが、現在はローカル企業へのサービスも積極的に展開しています。また、マレーシアだけでなく、シンガポール、ベトナム、タイなどASEAN諸国へのビジネス展開も行っています。
サイバネット・マレーシアでは、学術機関との協業にも力を入れていますが、マレーシアではどのような活動をされていますでしょうか?
MJIIT (マレーシア日本国際工科院)とMoUを締結し、マレーシアの研究者や学生と共に新しいソリュー ションの構築にも取り組み始めています。最近では、Malaysia Space Agency (MySA、日本でいうJAXAのよ うな機関)で、学生を対象としたシミュレーションコンペも実施しました。学生たちは非常に積極的で、モチベーションも高く、とても感銘を受けました。
大学とのコラボレーションにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
大学との協業は日本でも積極的に行ってきました。アカデミックライセ ンス販売という目的はもちろんありますが、大学と協業することで我々自身の技術力も確実に向上させることができますし、産官学連携でより新しい技術分野に展開するチャンスも生まれると考えています。私自身もASEAN各国の研究者の皆さまから日々学んでいます。
マレーシアを拠点に選んだ理由は何でしょうか?
マレーシアを選んだ大きな理由は 「英語が通じる」という点です。 ASEAN地域でビジネスを展開する際、英語でスムーズにコミュニケーションが取れるのは非常に助かります。また、マレーシアやシンガポール を拠点にすることで、ASEAN全体に向けてビジネスを広げやすくなります。
マレーシアと日本で強いビジネス分野に違いはありますか?
日本で強いビジネスとマレーシアで強いビジネスには違いがあります。たとえば、マレーシアでは石油化学関連産業が非常に活発です。国営石油ガス大手のペトロナスやその傘下企業が主要なプレイヤーです。またマレーシア以外のASEAN諸国でも現地の活発な産業にフォーカスし、現地ニーズに合ったビジネス展開をしています。
マレーシアの技術者の強みについて、 具体的に教えてください。
解析ソフトウェアの多くが海外製です。そのため、多くのソフトウェ アの技術情報や関連情報は英語で提供されています。マレーシアの技術者は語学力が非常に高く、英語での情報収集が得意です。そのため、必要な情報を迅速に見つけ出し、業務に反映するスピードは非常に速いです。もちろん日本の技術者も優秀ですが、個人的には日本の技術者の繊細さとASEANの技術者のスピード感の組み合わせがベストミックスだと考えています。
今後のビジネス展開について、どのようにお考えですか?
現在ASEAN全域でビジネスを展開していますが、広範なエリアをカバーするためには、現地のパートナーや大学との密接な連携が欠かせません。研究開発向けのシミュレーションソリューション(Ansys)に加え、 設計・製造現場向けのソリューション (PTC) の充実を図り、より幅広い顧客ニーズに応えていきたいと考えています。
日系企業へのメッセージをいただけますか?
ぜひローカル技術者に解析技術といった、より高度な技術に触れる機会を作ってあげてほしいと思います。 彼らの多言語対応能力にのみ目が行きがちですが、大学でしっかりと学んだ優れた技術者も多数います。個人的にはぜひ積極的に現地の人材を活用し、その能力を伸ばしてほしいと思います。またローカル技術者と日本人技術者の交流を活発にして、双方がより一層伸びていく環境を整えてほしいと思います。また、手前みそになりますが、マレーシア支社でも解析代行サービスを行っています。解析ニーズが発生した場合、多 くのお客様が日本の解析部隊に依頼されているかと思いますが、迅速にローカル言語対応が可能なサイバネットマレーシアのサービスも一つの手段として考えて頂けると幸いです。
最後に、今後の抱負やマレーシアでのビジネスに対する思いを教えてください。
私は個人的にマレーシアという国がとても好きです。豊かな文化や多様な人々との交流、ビジネスの可能性を日々感じています。これからもマレーシアでのご縁を大切にし、この国の発展に少しでも貢献できるよう努めていきたいと思っています。
CYBERNET SYSTEMS MALAYSIA SDN.BHD.
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