ホームインタビュー“相手を想って書く短い言葉が、人と人をつなげる 年賀状には文化以上の価値があるからこそ 伝え広げていきたい”
“相手を想って書く短い言葉が、人と人をつなげる   年賀状には文化以上の価値があるからこそ   伝え広げていきたい”

“相手を想って書く短い言葉が、人と人をつなげる 年賀状には文化以上の価値があるからこそ 伝え広げていきたい”

2024.02.22 特別インタビュー

今回は、マレーシアで年賀状イベントを主催するLam Ching Fuさん(FuFuさん)にお話を伺いました。

 

年賀状を知ったきっかけは?

22年前 日本語学校にて 

2002年から5年間、日本に国費留学をしました。最初に1年間通った日本語学校で、先生が年賀状について教えてくれました。発売日、受付開始日も決まっていて、クリスマスまでに投函すれば確実に元日に配達される。しかも1月7日までに出すのがマナーで、それ以降は寒中見舞いを送るという整ったシステムに「なんて日本らしい仕組みなんだ!」と驚いたのを覚えています。


なぜマレーシアで年賀状イベントを?

2022年イベントの様子 

当初からイベントを企画していたわけではなく、いくつかの出来事がつながり実施に至りました。最初のきっかけは、2019年に再び日本を訪れ、留学時代にお世話になった大阪のホストファミリーの家に滞在していた時のことです。ホストマザーが高齢ということもあり、家の掃除を手伝っていた際に、気になる箱を見つけて。許可を得て開けると、大量の切手が出てきたんです。お年玉付年賀はがきの賞品で当選した切手シートや、1970年の大阪万博の記念切手、さらに古いものだと昭和1桁代に発行された切手もありました。デザインも印刷技術も素晴らしいものばかりで感動していると、ホストマザーが「持って帰っていいよ」と。その瞬間、この貴重な品を託されたと感じました。

しかし次の年の2020年は、ちょうどコロナ禍で国際郵便もストップ。日本に留学して以来、毎年お世話になった方々に年賀状を送っていたので、とても寂しく思いました。そして2021年になり、ある媒体から日本について記事を書いてほしいと依頼がありました。掲載の12月に合わせて記事のテーマを考えていた際に「そうだ、年賀状だ」と。それまでの年賀状に関する経験が、すべてつながった瞬間でした。記事の掲載に合わせてイベントを企画。スタンプも準備し、年賀状作成を楽しんでもらえるよう工夫しました。完成した年賀状は、世界中の宛先へ向け実際に郵送。ホストマザーの切手も展示しました。

来場者の反応は?

2022年イベントの様子 

初回開催の2021年はまだコロナ禍で、移動制限がありました。ですので、故郷の母親宛に年賀状を書きながら涙を流す外国人や、地方出身のマレーシア人の姿もありました。2022年、2023年も実施しましたが、予想外に若者の参加者も多くて。スマホなどデジタル技術の普及で、手紙を書くチャンスも時間もない時代です。文字を書いてメッセージを送るという経験をほとんどしていないであろう世代が、スタンプも使わずにスペースいっぱいに黙々と文字を書く姿はとても新鮮でした。また昨年は、ロシア人でおそらくウクライナの関係で国には帰れないけれど、年賀状で母国の家族に元気だということを伝えた人も。年賀状のメッセージは短いものですが、送る相手を想いながら書くからこそ、人と人をつなげる力があり、文化以上の価値があると感じています。

続ける原動力は?

FuFuさんがホストマザーに送った年賀状 

小さなお子さんに、マレーシアで日本文化を感じてもらえることも嬉しいですし、最初は1人で、次は友だちと何度も来場し楽しんでいる方や、私が1人でボランティアで運営しているとわかり、おにぎりやお弁当を差し入れしてくれる日本人の方も。このような来場者の方との出会い、喜んでくださる笑顔、そして「来年も楽しみにしている」と言われると、もう、やめられません。

私は時に「日本人より日本人らしく真面目」と言われますが、これは、日本語学校を経て進んだ専門学校で、土木や建築について学んだ際に先生から「真面目にする大切さ」を教わったからです。日本は地震が多いので、建築の基礎を確実にしないと耐震性が保てず被害が出るということを常に言われ、それが私の今の道徳的な考えの軸になっています。なので、年賀状イベントも確実に積み重ね、目指すは12年間の毎年開催、十二支制覇です!

最後に読者にメッセージを

私はバスの旅が好きで、田舎のバスに乗るとコミュニケーションが豊かで、人と人とのつながりを感じます。ただ、そういうつながりは、便利さによって失われてしまいがちです。時代を越えて受け継がれたものが、ここ数年すごい勢いでなくなっています。とても、もったいないことです。ぜひ異文化を楽しみつつ、年賀状をはじめとする自分の文化をもう一度見つめ、大切にしてほしいと思っています。 

譲り受けた貴重な切手 

Lam Ching Fuさん

ペラ州出身。執筆家。

2002年に日本に国費留学。大阪の日本語学校、専門学校を経て広島大学で学士号を、その後ドイツの大学院で修士号を取得。BRT(バス高速輸送システム)が専門。マレーシア国内をバスで旅した体験を著書「My Journey By Bus」にまとめ、日本語版を含む多言語でバス旅の醍醐味を紹介している。 

@mynengajyo

 My Journey By Bus  
 

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