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マレーシア、SNS利用者への電子身元確認義務化に市民団体が懸念

マレーシア、SNS利用者への電子身元確認義務化に市民団体が懸念

2025.12.11 政治・社会

マレーシアで政府が全てのソーシャルメディア(SNS)利用者に対して、身分証明書の提出などによる電子身元確認(e-KYC:electronic Know-Your-Customer)の義務化を検討する中、監視団体や市民社会から強い懸念が表明されている。

政府の提案によれば、MyKad(国民身分証) やパスポート、MyDigital ID などを2026年第2四半期末までにアップロードさせる義務がSNS利用者に課される予定だ。しかし、報告書を発表した非営利メディア監視団体 Centre for Independent Journalism(CIJ) は、マレーシアには政府機関を縛る包括的なデータ保護の枠組みが整っておらず、この義務化は利用者のプライバシー侵害や国家による監視強化につながる可能性が高いと警告する。

過去にも、公的機関や民間企業で大規模な個人情報漏洩事件が多発しており、国民の信頼は揺らいでいる。CIJ は、今回のe-KYC義務化によって、SNS上での自由な意見表明が萎縮し、特にジャーナリストや内部告発者、社会運動家などが自己検閲を強いられる危険があると指摘する。

さらに、2025年には、インターネット上の発言に対して捜査や摘発が相次ぎ、特に人種、宗教、王室、政治に関するコメントが対象となるケースが増えている。これは、1998年制定の Communications and Multimedia Act 1998(CMA) の改正や、Sedition Act(扇動法) の適用拡大が背景にあるという。CIJ は、これらの法律があいまいな捜査権を政府に与えており、e-KYC導入によって国民のオンライン上の表現の自由がさらに制限される恐れがあると述べている。

また、義務化により、高齢者、難民、身分証を持たない人々、農村部の住民など、正式な身分証やデジタルアクセスを持たない人が除外される可能性も指摘されている。これにより、社会の情報参加の格差が拡大し、デジタル排除が進む懸念がある。

報告書をまとめたCIJは、「表現の自由とプライバシー権を守るため、現状のマレーシアにはe-KYC義務化に必要な制度的基盤が整っていない」と結論づけ、慎重な対応を求めている。

今後、政府がこのプランをどのように進めるか、国民や国際社会の反応が制度設計にどう影響するかが注目される。

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