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高齢化と年金不足の危機感 ― マレーシアで「定年延長」の議論再燃

高齢化と年金不足の危機感 ― マレーシアで「定年延長」の議論再燃

2025.12.03 政治・社会

マレーシアでは近年、高齢化の進展と年金や退職後の生活資金の不足を背景に、「定年年齢を60歳から引き上げるべきだ」という議論が改めて浮上している。経済学者らは、労働人口の減少や公的年金制度の財政的負担などを踏まえ、働けるうちは労働年齢を延ばす選択肢を支持する見解を示している。

現在、多くのマレーシア国民が定年退職後の生活に十分な貯蓄を持たず、60歳で退職した場合に将来の経済的な不安を抱える可能性が高いという。ある調査では、公的年金基金(EPF)に加入しているにもかかわらず、60歳時点での平均的な貯蓄額が小さいことが示されており、年金だけでは老後を支えるのが難しい家庭が多いとされる。 

こうした状況を踏まえ、専門家の間では、定年の引き上げによって労働者が働き続けることで、年金負担の軽減や収入の安定、さらには企業側にとっても経験豊富な人材を確保しやすくなると主張されている。特に知識型労働者や管理職など、体力依存度の低い職種では、年齢に関わらず貢献できるとの見方だ。 

一方で、反対意見もある。若年層の雇用機会が減少する、昇進やキャリア形成に支障が出る、身体的な負担が大きいなどの懸念を指摘する声は根強い。こうした問題を避けるため、多くの専門家は「一律の引き上げ」ではなく、段階的・柔軟な導入や職種ごとの対応、再雇用制度や再研修の強化を求めている。

マレーシアは今後、人口構成の急激な変化とともに、働き方と年金制度の見直しを迫られている。定年の引き上げが実現すれば、老後の生活設計や政府財政、企業の人材戦略にも影響が及ぶこととなりそうだ — 国全体の持続可能な社会保障と雇用のあり方が、改めて問われている。

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