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「なぜクアラルンプールは、あれほどの豪雨でも想定ほど浸水しないのか?」
そんな疑問の背景には、同市が密かに整えてきた“洪水に強い都市づくり”がある。
マレーシアの首都クアラルンプール(KL)は、近年頻発する集中豪雨とモンスーン期の激しい降水に備え、独自の「三重の洪水対策」を構築し、都市機能の維持と住民の安全確保に努めている。行政機関Kuala Lumpur City Hall(DBKL)は、リアルタイム監視、排水インフラの強化、大規模防災施設の活用という三本柱で、洪水リスクを最小限に抑える体制を整えている。
第一の柱は24時間のリアルタイム監視と迅速対応である。市内の水位センサーが危険な上昇を検知すると、排水ポンプや吸水トラックが即座に投入され、浸水の拡大を防ぐ。これらを統括する指令センターは常時稼働し、豪雨時の“頭脳”として機能する。
第二の柱は排水・貯水設備の整備とメンテナンス強化だ。下水道や排水路、洪水調整池の定期的な浚渫・点検を進め、都市化で増加した雨水量に耐えられるよう能力向上を図っている。
第三の柱となるのがSMART Tunnelに代表される大規模防災インフラの活用である。通常は高速道路として使われるが、大雨時には一転して巨大な排水トンネルに早変わりし、都心部の浸水を効果的に回避している。
さらにDBKLは、370人規模の専従チームをモンスーン期に常時待機させ、市内の15カ所の洪水リスク地点を重点監視している。こうした多層的かつ連動した仕組みが、KLが豪雨でも「思ったほど浸水しない」理由となっている。
気候変動で豪雨が増える中、都市の見えない部分で続く努力が、KLを洪水から守る要となっている。