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ナジブ元首相の「自宅拘禁」申請が却下された理由 ― 高等裁判所の判断を解説

ナジブ元首相の「自宅拘禁」申請が却下された理由 ― 高等裁判所の判断を解説

2025.12.24 政治・社会

マレーシア高等裁判所は12月22日、ナジブ・ラザク元首相が残りの刑期を自宅拘禁で執行するよう求めた申請を却下したが、裁判所がそのような判断に至った主な理由は何かが注目されている。裁判所は、憲法に基づく正式手続きを踏まずに出された「自宅拘禁命令(付加命令)」は法的に無効であり、執行できないと判断した。 

裁判官は判決文で、ナジブ氏の自宅拘禁命令は、当時の国王(ヤン・ディ・プルタン・アゴン)が恩赦委員会会議を経ずに出したものであり、連邦憲法第42条が定める「恩赦委員会の助言と協議」を欠いているため無効だとした。 憲法第42条では、恩赦や刑の軽減は国王が行うものの、恩赦委員会の構成メンバー(司法長官や直轄地担当大臣ら)と共に審議・助言を受けることが定められている。 

裁判所はさらに、マレーシアには「自宅拘禁」を直接執行するための具体的な法律の規定が存在しないと指摘した。弁護側は「刑務所法1995」の条項を根拠に自宅拘禁を主張したが、裁判官はこれが「仮釈放」の規定であり、自宅拘禁とは異なるとして却下した。仮釈放では刑務所総監が許可条件や期間を決めるが、付加命令は総監に一切の裁量権を与えていない点も矛盾として挙げられた。 

さらに、高等裁判所は付加命令が恩赦委員会の会議記録に一切記載されておらず、実際の会議で「自宅拘禁」について審議・決定が行われなかったことを確認。これにより、恩赦委員会の助言がなかったという事実が、命令の手続き上の欠陥として強調された。 

弁護側はこの判断を不服として控訴する方針を示しており、ナジブ氏が仮釈放の申請を検討していると述べているが、少なくとも現段階では「自宅拘禁」の実行は認められない見通しが強まっている。

今回の判断は、マレーシアにおける恩赦権と憲法上の手続きの限界を明確にし、国王の裁量と法的手続きの関係を巡る司法判断としても大きな注目を集めている。 

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