ホームマレーシアニュースマレーシア、数学・理科の成績に社会経済格差の影響―― TIMSS 2023で明らかに
マレーシア、数学・理科の成績に社会経済格差の影響―― TIMSS 2023で明らかに

マレーシア、数学・理科の成績に社会経済格差の影響―― TIMSS 2023で明らかに

2025.04.18 政治・社会

2023年に実施された国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)において、マレーシアの学生の成績は国際平均を下回り、特に低所得層の学生の成績が全体のパフォーマンスを大きく押し下げたことが明らかとなった。

この結果は、TIMSS2023の詳細データをもとに『The Star』紙が実施した分析によって浮き彫りとなり、専門家たちは、政府に対し、社会経済的に不利な立場にある学生への教育機会の質的向上を求めている。

TIMSS4年に1度実施される国際的な教育到達度調査であり、数学と理科の学力を世界58の国と地域で比較する。報告によると、マレーシアでは調査対象となった生徒のうち、69%が低所得層、22%が中所得層、残る9%が高所得層に属していた。

高所得層の学生は、家庭に25冊以上の本があり、少なくとも1人の親が大学を卒業し、専門職に就いているケースが多い。一方、低所得層の学生は、家庭にある書籍が25冊以下で、親の学歴は高卒以下、職業も専門職に該当しない傾向が見られた。

マレーシア科学大学(USM)教育学部のハズリ・ジャミル教授は、教育資源や家庭環境、学習機会へのアクセスの格差が、学力差の主因であると指摘した。裕福な家庭の学生は、個別指導、安定した家庭環境、親の関与といった要素に恵まれており、学校の文化に合った言語や価値観への接触機会も多いという。

教授はさらに、社会経済的地位(SES)の違いが学力のほか、動機づけ、思考態度、言語能力、情緒的な安定性にまで影響を及ぼしていると説明した。また、試験形式そのものが、テスト慣れしている層に有利な構造となっている可能性にも言及し、包括的な政策対応の必要性を訴えた。

TIMSS2023のスコアによれば、国際平均は数学で高SES層が544点、中SES層が502点、低SES層が459点であるのに対し、マレーシアの学生はそれぞれ462点、438点、395点と大きく下回っている。理科でも、国際平均は高SES層が535点、中SES層が490点、低SES層が444点に対し、マレーシアは471点、453点、412点とすべてにおいて下回る結果となった。

一方、TIMSSではマレーシアの社会経済層間の成績格差が比較的小さいとされており、これは教育へのアクセスがある程度平等であることを示唆するが、全体の底上げには至っていない。対照的に、シンガポールでは高SES層が653点、中SES層が603点、低SES層が544点と高スコアを記録しつつ格差も顕著である。

UCSI大学のスィティ・ハミシャ・タプシル副総長は、「裕福な家庭環境が有利であることは確かだが、それが成功のすべてではない」と述べ、困難な環境からでも大きな成功を収めた学生を数多く見てきたと語った。かつて教育省の長官を務めた同氏は、「マレーシア教育大綱2013–2025」が思考力や創造力の育成を重視している点を評価しつつも、「その実現には、情熱的で柔軟、かつデジタル技術に精通した教師の存在が不可欠だ」と指摘した。

最終的に、教育格差の是正には、教材やインフラの整備だけでなく、教員育成や家庭支援など、制度全体を見据えた包括的な取り組みが求められている。

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