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マレーシア統計局(DOSM)の最新の家計所得報告によると、2024年の可処分世帯所得は平均で3.2%、中央値で5.1%上昇し、所得格差の縮小傾向も示された。しかし専門家らは、この数字だけでは実態を十分に反映していないと警鐘を鳴らしている。物価上昇が所得増加分を打ち消し、多くの世帯が実質的な購買力の改善を実感できていないためだ。
経済研究機関「Socio-Economic Research Centre」のリー・ヘン氏は「名目上の上昇だけでなく、インフレを考慮した場合に実際の支出力がどれだけ増えたのかを見る必要がある」と述べ、特に都市部での生活コストの上昇が家計に打撃を与えていると指摘した。
燃料や交通費、食料といった生活必需品の価格高騰が家計を直撃しており、政府が導入しているBudi95燃料補助制度も一時的な緩和策にとどまり、持続的な支援には至っていないとの見方がある。
消費者団体FOMCA(マレーシア消費者協会)のサラヴァナン最高経営責任者も「統計上の平均値は高所得層によって押し上げられている可能性がある。一般世帯は依然として物価上昇の重圧に苦しんでいる」と強調。特にM40(中所得層)やB40(低所得層)の住民からは、実質所得の伸びを感じられないという声が根強い。
リー氏はまた、「所得上昇は持続可能な高賃金雇用と生産性向上に支えられるべきであり、政府補助に依存するだけでは不十分だ」と述べ、政策構造の見直しを訴えた。
マレーシア経済は依然として成長基調にあるとされるが、こうした「目に見えにくい圧力」を無視しては、家計の実感を伴う成長とは言い難い。今後は物価抑制策、所得階層ごとの支援、賃金制度改革などが問われる重要な局面を迎えている。