関連メディア
グルメシアン[外食・グルメ情報はこちら]
生活情報サイト[生活お役立ち情報はこちら]
日本貿易振興機構(JETRO)クアラルンプール事務所は1月11日、高齢者介護市場に関する「マレーシア医療ビジネス解説セミナー」をオンラインで開催した。
世界銀行(A Silver Lining: Productive and Inclusive Aging for Malaysia, 2020)によると、マレーシアは、2044年までに人口の14パーセントが65歳以上の「高齢社会」に、さらに2056年には人口の20%以上が65歳以上の「超高齢社会」になると予想されている。また、三世代同居世帯は、2004 年の 41.1 %から 2016 年には 30.7 %まで減少しており、高齢者介護サービスのニーズは高まるばかりだ。
セミナーでは冒頭、JETROクアラルンプール事務所の高野光一所長があいさつし、 マレーシア金融大手RHBバンク傘下のシンクタンク「RHBリサーチ」が昨年11月に公表したレポートで、高齢化先進国として日本を取り上げたと紹介。同レポートは「介護分野における日本の高い技術が新たな産業を発展させるとともに、高齢者ニーズに柔軟に対応する社会の構築にも貢献している。アジア諸国でもエイジテック業界は高い成長可能性を秘めており、高齢者産業に向けた技術インフラ整備を進めるべき」と提言したと述べた。
さらに「マレーシアは高所得者層が多く、人口の約2割(約660万人)が富裕層で、シンガポールの総人口(約570万人)を超えている。この富裕層は今後も増加見込みであり、所得増という面からもマレーシアの高齢社介護市場は拡大すると期待されている」とした。
続いて、マレーシアの高齢者介護市場について、マレーシア高齢者介護住宅事業者協(AGECOPE)のダーレン・テラス・ダグラス会長が講演。「介護士のトレーニングが標準化されておらず、介護設備、機材も不足している。特に、ムスリムを対象にした介護施設が少ないという問題が顕在化しつつある」と話し、課題を提起した。
また、介護用品の販売や介護施設の運営を手がけるアジアン・インテグレーテッド・メディカルの共同創設者であるオリビア・クア氏は、生活に必要な設備がそろったリタイアメントビレッジなど施設への入所を希望する高齢者は増えているが、依然として、住み慣れた自宅での介護を希望する人が多いとトレンドを紹介。
日本との連携に期待する分野は多く、例えば高齢者が暮らしやすくするための住宅リフォームや、飲み込みやすい食品の開発、車椅子のまま乗れる自動車などの移動手段や、会話をするロボット、ペットセラピー、さらには冬の間にマレーシアで過ごすヘルスケアツーリズムなどを挙げた。
高齢者サービスの分野では、すでにJICA国際協力機構が、ボランティア派遣事業(JICA海外協力隊)でマレーシアの高齢者ケア施設に介護士を派遣するなどの取り組みを行っており、今後は民間での連携も加速するものとみられる。