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マレーシアは急速な工業化と経済成長を進める一方で、産業活動が温室効果ガス排出の主要因となり、気候変動リスクが高まっている。2025年には猛暑で気温が40℃を超える日が複数回観測され、ジョホール、サバ、サラワク各州では頻発する洪水が国民生活に深刻な影響を及ぼした。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス グランサム気候環境研究所のボブ・ウォード氏は、「誰もが気候変動の影響を受ける。ネットゼロ排出に向けた移行が不可欠であり、化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を加速する必要がある」と指摘している。
マレーシア政府は2023年に「National Energy Transition Roadmap(NETR)」を策定し、2050年までのネットゼロ排出と再生可能エネルギー比率70%を目標に掲げた。特に排出量の多い工業団地の脱炭素化が、国内全体の排出削減において最も効果的な手段とされる。
UEM Lestra Bhd とその子会社 NUR Power Sdn Bhd は、ジョホール州セガマットの1GWハイブリッド太陽光発電所や、サバ州でのバイオ圧縮天然ガスプラントの開発などを推進。Kulim Hi-Tech Park(KHTP)では、スマート・グリーン工業団地化に向け、太陽光発電(最大500MW)や電力貯蔵システムの導入を進めており、再生可能エネルギー拡大の先導役を担っている。
脱炭素化は環境保護のみならず、経済競争力や雇用創出にも寄与する。グリーン経済への移行により、高付加価値雇用の創出や中産階級の拡大が期待され、世界経済フォーラムも2030年までに1,000万人規模の新規雇用が生まれる可能性を指摘している。
一方で、インフラ更新や高度技術導入の費用負担が課題。ウォード氏は、「NETRは野心的な計画だが、化石燃料からの脱却には大胆な投資が必要」と警鐘を鳴らす。マレーシアの産業界全体で再生可能エネルギーを拡大し、脱炭素化を進めることが国際競争力維持の鍵となる。