滋賀県に本社を置く老舗バルブメーカー、株式会社オーケーエム。同社の主力製品であるバタフライバルブは、船舶排ガス用をはじめ世界的に高いシェアを誇る。その製造・販売の要所であるOKM VALVE (M) SDN.BHD(1988年設立)は、顧客の緻密なニーズに応える設計・開発力を武器に、世界の海運インフラを支えてきた。
しかし老舗ゆえの長年続いてきたアナログな管理体制が、さらなる成長を阻む要因ともなる中、同社は抜本的な業務体制の改善を検討し始めていた。その難局を打開したのは、DXコンサルティングからシステム実装までを一気通貫で支援するアジアクエストという伴走者の存在。
同社が取り組んだのは、『本当に現場で使われるシステム』にするための超高速開発サイクルを採用した「伴走型」のDX だ。売上増と離職率低下を両立させた本質的な変革の軌跡を、OKM Valve Malaysiaの大川氏、築田氏、アジアクエストの藤井氏、星氏に伺った。

アナログな管理体制の課題
―まず導入前の状況についてお聞きします。当時はどのような課題があったのでしょうか。
大川氏(OKM)(以下、大川(OKM)): 長い歴史がある会社ゆえ、デジタル化されていないペーパーベースの管理方法がまだ多く残っていました。また、私たちの強みは「顧客の特殊なニーズに応える設計・開発力」にありますが、そのカスタマイズ性の高さゆえに、管理すべき部品や在庫の種類が膨大で煩雑でした。
―ペーパーベースの管理ですと、ミスも起こりやすくなりそうです。
大川(OKM):そうですね。人的ミスにより、在庫管理が適正にできていないと納期遅延に繋がります。全ての工程に影響してくるので、できるだけ早くデジタル化したいと考えていました。
―膨大な在庫管理をどのようにされていたのですか?
大川(OKM):「自社システムとアナログ管理の併用」という状態でした。システムは存在していても全体を俯瞰できず、結局は複数のエクセルデータを突き合わせて確認する日々。承認作業もすべてペーパーベースで、日本人の管理者が不在時には承認が滞り、現場の業務が止まってしまう。「アナログな現場」の限界が、成長の足かせになっていたんです。
―その危機感から、まずはどのように行動されたのでしょうか?
大川(OKM):在庫管理と承認のシステムのデジタル化はすぐにでも改善が必要だと考えました。システムを一から作り直す事も検討はしましたが、莫大な費用と時間がかかることもあり、まずは小さく始めることを決めました。
築田氏(OKM)(以下、築田(OKM)):今の仕組みを活かしながらスモールスタートできるkintoneに注目し、まずはサイボウズ社へ直接問い合わせをしたんです。
伴走スタイルで取り組んだ業務整理
―そこからアジアクエストさんとの出会いに繋がるわけですね。
築田(OKM):はい。サイボウズ社から紹介されたのがアジアクエストの藤井さんでした。kintoneは自社で運用できるのが魅力ですが、当時の私たちには圧倒的に人的リソースが足りませんでした。単なるツールの提供ではなく、私たちの隣で一緒に走ってくれる「伴走スタイル」を提案してくれたアジアクエストさんは、まさに私たちが求めていたパートナーでした。
藤井(AQ):お話をいただいた時、大川さん、築田さんの「現場を何とかしたい」という熱量を強く感じました。ただ、その熱量を形にするには、まず「複雑化した業務」をすべて解きほぐす必要があると考えたんです。そこで、まずは徹底的な業務の棚卸しを行いました。現場のヒアリングを重ねて課題を洗い出し、今の運用に合わせた最適なフローを再構築する「業務整理」に一緒に取り組みました。
築田(OKM):一緒に業務を改めて整理してもらうことで、課題の洗い出しや問題個所を特定することができました。現状を把握し、全体のフローを整理することができたのはとても大きかったです。
藤井(AQ):ルールはあっても全容を把握しきれていない、業務の全体像を把握することが難しいというのはよくある声です。業務効率化を阻害している要因がどこにあるのかを特定するための「業務整理」のプロセスは、非常に重要だと考えています。今回のプロジェクトでは、まずは現状を正確に把握することから始めることが、OKM様にとって最善の道だと判断しました。

現場を動かす「翻訳力」
―その業務整理の後に、プロジェクトマネージャーの星さんが参加されました。
築田(OKM):星さんの存在は、今回の成功に欠かせないものでした。製造業のシステムに精通している星さんは、私たちのバルブ製造のフローや必要としているシステムをまるで身内のように理解してくれました。
星(AQ):私は「ITコンサルタント」として、OKM様のビジネスを把握し、デジタル技術へと翻訳する役割に徹しました。特に資材所要量計画(MRP)のデジタル化では、無理にシステムを合わせるのではなく、kintoneとプラグインを賢く使い、いかに「無駄なく、適切な価格で」最適解を出すかを追求しました。
築田(OKM):星さんに相談するたびに「現場の負担を減らしつつ、効果を最大化する解決策」を即座に提案してもらえる。その安心感は格別でとても感謝しています。私たちは星さんのお名前にちなんで、新システムを「スターシステム」と呼んでいるくらいです(笑)。
星(AQ):最初から完璧な完成形を目指すのではなく、まずは「ざっくりとした要件」でとにかく短期間でプロトタイプを作り、実際に使ってもらいながら修正を繰り返すアジャイル形式を採用して進めました。
藤井(AQ):OKM様の課題解決は急務でした。そこで、まずは早期稼働が可能な「アジャイル方式」を採用し、現場のトライ&エラーを繰り返しながら精度を高めていく手法を提案しました。
―実際の業務をしながらの新システム導入、負担ではありませんでしたか?
築田(OKM):日本人担当者が導入に専念するのは難しい中、星さんが私たちの意図を汲み取り、アジアクエストさんのローカルエンジニアへ的確に「翻訳」してくれました。彼らが現場のスタッフと現地の言葉で直接対話を重ね、「現場の本音」を丁寧に吸い上げてくれたことで、導入後のミスマッチを確実に防ぐことができました。この連携の形は、本当にありがたかったですね。
星(AQ):今回は私とマネージャークラスを含むローカルエンジニア3名で担当しています。ローカルエンジニアが現場に入り、スタッフと同じ目線で対話を繰り返すことに注力しました。単なる要件定義ではなく、「現地の言葉による双方向のコミュニケーション」を徹底したからこそ、現場に「自分たちのためのシステムだ」という納得感が生まれ、スムーズな定着に繋がったのだと感じています。
―MRP(資材所要量計画)のデジタル化を含め、導入後の具体的な成果や現場の変化はいかがですか?
大川(OKM):かつては部品一つが欠品しただけで納期遅延が発生するリスクが常にありました。それを防ぐために複数のエクセルデータを突き合わせ、膨大な時間をかけて照合していたんです。それが今では、kintone上で一目で確認できる。限りなくヒューマンエラーを少なくすることができています。
星(AQ):複雑なロジックを組むのではなく、標準機能とプラグインを賢く組み合わせることで、運用の柔軟性を保ちました。実績管理も簡略化され、経年のデータを瞬時に比較できるようになったと思います。
大川(OKM):売上の実績も一目で分かるので、各種報告書の作成時のデータ収集が容易になったのはもちろん、長期的な視点での計画も各段に立てやすくなりました。
―データの可視化によって、経営判断のスピードも上がったのですね。現場のスタッフの方々のマインドにも変化はありましたか?
大川(OKM):業務フローが整い、業務が効率化したことでスタッフの離職率が下がっているのもとても嬉しい変化です。単なる作業から解放され、より付加価値の高い業務にシフトできている。スタッフの「考える時間」が増えました。働きやすい現場になってきたと思ってくれているのではないでしょうか。その結果、商品の供給量が増え、売上も右肩上がりで推移しています。

世界各国からの問い合わせが
―さらに、今回はWebsiteのリニューアルもアジアクエストさんが手がけられたそうですね。
築田(OKM):リニューアル直後から、世界のこれまで接点が無かった地域からも頻繁に引き合いが届くようになりました。私たちの製品の認知度が高まっている実感があります。
藤井(AQ):社内の効率化と、社外への価値発信。その両面をお手伝いできて嬉しいです。
今後の展望とメッセージ
大川(OKM):私たちのゴールは、高品質なバルブを一つでも多く、世界中へ安定して届け続けることです。今回の取り組みを通じて、離職率の低下や売上の向上といった目に見える成果が出始めており、組織として大きな手応えを感じています。
築田(OKM):弊社のような製造業現場を支えてくれているアジアクエストさんは、私たちのビジネスを理解し、同じ熱量で並走してくれるパートナー。なんでも相談させていただいたことで、今回の変革が実現しました。もし人手不足やアナログな環境に悩んでいるのなら、まずは現状をありのままに相談してみると良いと思います。彼らとなら、必ず道が開けるはずです。
藤井(AQ):OKM様の挑戦はまだ始まったばかりです。これからも全力でその歩みを支え続けていきます。私たちアジアクエストでは、製造業をはじめとする現場のDX推進を幅広く支援しています。現状の体制に課題を感じていらっしゃる企業様は、ぜひお気軽にご相談下さい。






